スレート屋根はセメントを主原料とする屋根材で、住宅や工場の屋根など様々なところで見かけられます。
スレート屋根は何年も前から使用されている屋根材であり、今でも改良を重ねながら主流となっている屋根材の1つです。
また、元々アスベストが使われていたこともあり、古いスレート屋根にはアスベストの処分が必要となることもあります。
メリットも多くありますが、注意すべき点も多い屋根材です。
今回は、スレート屋根について修理方法や、葺き替えの方法、金額など様々な側面から解説をしていきます。
これから修理や葺き替えを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
スレート屋根とは?

スレート屋根はセメントを主原料とする屋根材のことです。
戸建て住宅では、セメントを主成分とする厚さ5mm程度の薄い板のような形で使われることが多く、フラットな形状をしています。
都心や郊外など、あまり天候に左右されない地域では使われることが多く、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
地域によって呼び名が変わるようで、「コロニアル」や「カラーベスト」「平板(へいばん)スレート」「化粧(化粧スレート)」「スレート瓦」「新生瓦(しんせいかわら)」などの呼び方があるようです。
住宅以外でも、工場や倉庫では、波型の形ををしたスレート屋根が使われてることが多くあります。こちらは、波型(なみがた)スレートと呼ばれています。
工場や倉庫ではある程度の強度が必要であるため、戸建て住宅のスレートよりは分厚く作られています。
スレート屋根の特徴について
では、スレート屋根の特徴について細かく見ていきましょう。
スレート屋根のサイズ感
一般的なスレートのサイズは幅91cm×高さ41.4cmが主流です。
厚さは約5mmとなっています。
上部に4か所、釘を打って固定する穴があり、釘を屋根の下地に打ち込んでスレートを固定していきます。
1枚のサイズ |
幅910mm×高さ414mm |
厚み | 5.2mm |
1㎡あたりの重量 | 約20Kg |
1㎡あたりの必要枚数 | 約6枚 |
1㎡あたりの値段 | 約3,000円 |
1枚あたりの値段 | 約500円 |
重さが瓦屋根よりも軽く、金属屋根よりも重いのが特徴の一つです。
そのため、耐久性と耐震性のバランスが取れた屋根であるとも言えます。
スレート屋根の耐久性
ではスレート屋根の寿命について解説していきます。
スレート屋根は製造された年代によって耐久性が変わります。
特に第二世代のスレート屋根は脆く、割れや欠けなどの不具合が多発しやすいようです。
世代 | 耐久性 | 製造時期の目安 | アスベスト有無 |
第一世代 |
30年~40年 | 1990年代中頃以前 | 〇 |
第二世代 | 15年~25年 | 1990年代中頃~2000年代中頃 | × |
第三世代 | 30年 | 2000年代後半 | × |
上記の表を見ると、スレート屋根の寿命(耐久年数)の目安は、10〜35年程度です。
一般的には、耐久性が高い商品であれば20~30年、長寿命の製品であれば35年ほど持つようです。
ただし、中には外的要因などの様々な影響で、10年~15年程度で劣化するケースもあります。
また、スレート屋根の耐久性は、建物の環境だけでなく「アスベストの有無」「製造時期」にも左右されます。
特にアスベストを含んでいるスレート屋根は、約20〜25年の耐久性があると言われています。
これは、アスベストが耐久性をあげる目的で使用をされていたためです。
しかし、近年ではアスベストによる健康被害が指摘され、2004年以降はアスベストを含む屋根材は製造されなくなりました。
その後、ノンアスベストに切り替えが行われましたが、当初は従来よりも強度の弱い屋根材しか作ることが出来ませんでした。
そのため、アスベストが問題視された199年代後半~2000年初期付近に製造されたノンアスベストの屋根材は、寿命の短いものが多く出回ってしまいました。
現在は、この問題は解消され、耐久性の高い屋根材が販売されています。
もし、劣化状況が不安な場合は、修理業者に相談してメンテナンスをしてみてください。
スレート屋根は割れても大丈夫
スレート屋根はセメントで出来ているため、飛来物などで割れてしまうことがあります。
割れてしまうと隙間から雨漏りが発生するのではないかと心配になりますが、ほとんどその心配はないようです。
それは、スレートの屋根は2重構造となっているからです。
たとえば、スレートが1枚落ちて無くなってしまっても、その下にはもう1枚スレートがあります。
そのため、多少の割れやかけであれば、もう1枚のスレート屋根が役割をしてくれます。
ただし、雨漏りは問題ないとしても、割れたスレート屋根が風で飛ばされて、隣家や人にぶつかってしまう可能性は考えられます。
そのため、もし割れやヒビを発見した場合は、なるべく早く修理を依頼することをおススメします。
スレート屋根で重要となる”隙間”
スレート屋根は何枚も重ねて屋根を仕上げるため、スレート屋根本体の上下左右にはたくさんの隙間ができます。
隙間からは雨水が入り込むため、なるべく埋めた方がいいと思われるかもしれませんが、この隙間はスレート屋根にとって重要です。
この隙間は、スレート屋根の内部に雨水が入り込んだ時に、雨水を排水する役割を担っています。むしろ隙間がないと雨水による腐食が進んでしまい、雨漏りに繋がってしまいます。
そのため、スレート屋根を塗装するときは、隙間を埋めないよう「タスペーサー」とよばれるプラスティック部材で隙間を 作って作業を行います。
もしくは、「縁切り」と呼ばれるカッターのような道具を使って塗膜を手作業で切断をし、隙間を作ります。
隙間が空いているからと言って不安に思わず、むしろ必要な状態だと認識しておきましょう。
スレート屋根で雨漏りが生じる原因は?
ここまでスレート屋根の特徴を解説してきましたが、雨漏りが防げる構造になっているため、雨漏りの心配が無い屋根なのではないか?と思われたかもしれません。
しかし、スレート屋根でも雨漏りが発生することはあり、その原因はルーフィング(下葺き材)とよばれる防水シートにあります。
スレートのすき間に入った雨水は、ルーフィングがガードしてくれますが、このルーフィングが破れてしまうと、雨漏りに繋がります。
外からはわかりづらいため、もし不安があるときには修理業者に相談してみると良いかもしれません。
スレート屋根を構成する部材の名称と耐久性

- スレート屋根本体(コロニアル・カラーベスト・平板スレート・化粧スレート)
- 防水シート(ルーフィング)
- 野地板(のじいた)
- 棟板金(むねばんきん)
- ケラバ板金
- 軒先板金(のきさきばんきん)
- 破風板(はふいた)/鼻隠し(はなかくし)
スレート屋根を構成する部材 | 耐用年数の目安 |
防水シート |
10年~20年 |
野地板 | 35年~45年 |
棟板金 | 10年~15年 |
ケラバ板金 | 20年~30年 |
破風板 | 20年~30年 |
スレート屋根のメリット

では、スレート屋根を使用するメリットについて解説をしていきます。
値段の安さ
スレート屋根は、瓦屋根や金属屋根と比べて価格が安いです。
スレート屋根は1㎡あたり4,000円~5,000円程度で工事を行うことができ、これは屋根材の中でもかなり安い部類です。
素材が軽い
スレート屋根の重さは瓦の半分の重さしかありません。
日本では、阪神淡路大震災以降、屋根材の軽量化が進められてきました。
その中でスレート屋根は、建築基準法の中でも、スレート屋根は「軽い屋根材」に分類されています。
素材が軽いことで地震で崩れる可能性が低くなり、耐震性が上がります。
工事が簡単
スレート屋根は工事が簡単で、早く作業が進むこともメリットです。
工期を抑えることができるため、費用を抑えることにも繋がります。
スレート屋根のシェアが下がっている理由

ここまでスレート屋根の特徴や良さについての解説をしてきましたが、現在ではスレート屋根のシェアは年々減少しています。
その理由について解説していきましょう。
アスベスト問題
最も大きな原因としては、アスベスト問題があげられます。
スレート屋根は1990年代は屋根材としてダントツトップの位置にいました。
しかし、2000年初期にアスベスト問題が発生し、スレート屋根は敬遠されるようになりました。
その後にノンアスベストのスレート屋根も登場しましたが、こちらは耐久性が低く、またアスベストのイメージも消えなかったため、なかなかシェアが上がりませんでした。
値段や素材の軽さなど、メリットも多々ある屋根材ですが、このような問題が起こってしまった結果、なかなかシェアを取り返せないのが現状です。
ガルバリウム鋼板が評価される
スレート屋根のシェアが下落している一方で、ガルバリウム鋼板の人気が高まってきました。
ガルバリウム鋼板はトタンに代わる素材として、30年近く前に開発され、現在ではリフォームだけではなく新築でも最も多く用いられている屋根材になっています。
開発されたのは30年前でしたが、屋根材としての実績を着実に積み上げて現在の評価に至っています。
現在では、総合的にガルバリウム鋼板の屋根が最も高い評価を得ているようです。
スレート屋根の復活はあるのか
では、これからスレート屋根の復活はあるのでしょうか。
現在はアスベストの問題も少しずつ解決され、スレート屋根自体も耐久性の高い、新たな商品が数多く出ています。
そのため、時間は掛かるとは思いますが、これから着実にシェアを取り戻していく可能性は大いにあります。
ガルバリウム鋼板でも、30年前はほとんど見向きもされない素材でした。
しかし、現在では信頼を獲得して、トップシェアを誇っています。
そのため、スレート屋根もこれから着実に実績を積み上げていくことで、再度トップシェアに躍り出ることは充分考えられるでしょう。
スレート屋根のリフォーム方法と費用

最後にスレート屋根の修理方法と費用の相場について説明をしていきます。
相場はあくまで参考値ですので、実際の金額は修理業者に見積もりをとって確認をしてください。
スレート屋根の部分修理
スレート屋根が剥がれたり割れたりした部分に、新しいスレートを貼り付けて補修します。
また、スレート1枚を差し替えることも可能です。
ただし、屋根全体が傷んでいる場合は、修理のキリがありません。
そのため、築年数が相当年数経過したスレート屋根や第二世代のスレート屋根は、部分修理でなく、全体の葺き替えを検討してみるとよいでしょう。
修理内容 | 改修費用 |
応急処置 | 5万円 |
コロニアルの一部交換 | 3万~30万円 |
スレート屋根の塗装
スレート屋根は、屋根塗装をすることが多い屋根材です。
屋根塗装をすることで寿命が伸びることは立証されていませんが、美観目的で塗装をします。
メーカーカタログでも屋根塗装は「美観維持が目的」としっかり明記されています。
修理内容 | 改修費用 |
シリコン塗料 | 25万~40万円 |
屋根塗装と棟板金交換 | 40万~60万円 |
棟板金(むねばんきん)の修理
スレート屋根のてっぺんに取り付けられている棟板金(むねばんきん)は不具合が多く発生する部位です。
特に強風で、壊れるケースが多くあります。
原因は棟板金を留めている釘や棟板金の裏にある木下地の腐食です。
一般的に棟板金のメンテナンスは10年~15年に1度は必要です。
修理内容 | 改修費用 |
棟板金の交換 | 3万~30万円 |
換気棟(かんきむね)の取り付け
換気棟とは、穴の開いた板金部材です。
屋根のてっぺんに穴を設けることで、屋根裏の熱と湿気を外に放出させることができます。
新築住宅では、ほぼ100%取り付けされており。
おおよそ税込み3万円から10万円程度が換気棟取付の相場です。
スレートに屋根カバー工法
屋根カバー工法では、古いスレート屋根の上に防水シートと金属屋根を張って屋根をリフォームします。
葺き替えよりも費用を抑えて屋根全体の改修ができるため、費用対効果が高いリフォーム方法です。
修理内容 | 改修費用 |
エスジーエル鋼板(断熱一体型) | 100万~120万円 |
ガルバリウム鋼板(横葺き・断熱材なし) | 90万~110万円 |
ガルバリウム鋼板(縦葺き・断熱材なし) | 80万~100万円 |
スレート屋根の葺き替え
葺き替え工事は、古いスレート屋根を剥がして屋根を張り替える工事です。
完全に新しい屋根に変わることができますが、その分費用は掛かります。
また、既存の屋根にアスベストが使用されている場合は、撤去処分費用が加算されます。
葺き替えを行うときは、野地板(のじいた)を新しくしましょう。
野地板は屋根の下地材のことで、腐食が進行すると屋根が剥がれやすくなります。
野地板を新しくする工事は、葺き替え工事でしか行えないため、一緒に工事をしてもらいましょう。
修理内容 | 改修費用 |
石綿なしスレート(断熱一体型) | 145万〜165万円 |
石綿ありスレート(断熱一体型) | 165万〜185万円 |
まとめ
今回は、スレート屋根について詳しく説明をしてきました。
スレート屋根はトップシェアを誇っていた屋根材ですが、アスベスト問題などでシェアは現在急落しています。
しかし、良さも数多くあり、現在ではデメリットも解決されてきている屋根材であるため、これから徐々にシェアを伸ばすことが期待されています。
何より、費用を抑えて設置ができるため、これを機会にぜひスレート屋根を検討してみてください。
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