瓦屋根に重要な漆喰とは!?役割や修理方法について詳しく解説

漆喰工事

瓦屋根には漆喰(しっくい)と呼ばれる部分があります。
名前だけは聞いたことがあっても、実際にはどこの部分を指しているのか、何を指しているのかイメージが湧きにくい人も多いのではないでしょうか。
この漆喰は、瓦屋根にとっては非常に縦横な役割を果たしており、屋根修理の際にもよく依頼のある部分です。
今回はこの漆喰について詳しく解説をしていきますので、ぜひ参考にしてください。

漆喰の役割

漆喰工事

漆喰は壁・天井などに使用される塗料のことで、主に石灰に、ふのり・粘土などをねり合わせたものです。
住居では瓦や壁の上塗り、天井など様々な部分で使用されています。
漆喰の歴史は古く、日本では縄文時代から使用されていたとされています。
日本だけでなく、世界中の建築物で使用されており、古代ローマ時代の建物から、日本のお城まで使用用途は様々です。
現代の日本では主に屋根の棟(むね)と瓦の間の隙間を埋め、替え瓦と瓦を接着させる目的で漆喰(しっくい)が塗られています。
また外壁にも漆喰は使われており、漆喰を使った壁は呼吸する壁とも呼ばれています。

呼吸する壁とは?

漆喰を使った壁は「呼吸する」と言われています。
もちろん比喩的な表現ではありますが、このように呼ばれています。
漆喰の主原料である消石灰は、二酸化炭素を吸収することで徐々に石灰石に変化していきます。
消石灰から石灰石に戻るまでには、100年を超える長い時間がかかります。
このように二酸化炭素を吸収し、時間をかけてゆっくり固まっていくことから呼吸をしていると例えられるのです。
この呼吸は、冬場の「乾燥」や夏場の「湿気」を防ぐ効果が期待できます。また、室内の湿度を調節してくれる機能があります。
これは伝統的に日本の蔵でも使われている実績があり、収蔵品を湿気や乾燥から守ってきました。
現代の住宅は気密性が高いため、エアコンなどで室温や湿度を調整することが増えています。
しかし、漆喰の壁を使用することで、エアコンに頼りすぎることなく快適な生活を送ることができます。

瓦屋根に使われる漆喰について

漆喰

では、こちらからは瓦屋根に使われる漆喰について解説をしていきます。
日本瓦では、粘土などを土台として瓦を積み重ね、棟瓦を固定しています。
その際、棟の内部にあり、冠瓦やのし瓦を支えるために設けられているのが葺き土です。
葺き土は泥状で水分を含んでいますが、劣化により硬くなると瓦の固定力が弱くなり、瓦のズレや歪みに繋がってしまいます。
この葺き土を守るのが、漆喰の役割です。
主に葺き土が雨に濡れて流れでないように雨水から保護します。
それに加え、漆喰には接着の目的もあります。
棟瓦に隙間があると瓦がズレて、落下するリスクが出てきます。
これを、漆喰でしっかりと固定することで、地震や強風などの刺激にも強くなり、瓦の落下を防ぎます。
また、瓦屋根がズレていると美観も損なうため、漆喰を使用することで美しい瓦屋根を作るという目的もあります。
その他にも、隙間から鳥やネズミなどの小動物を侵入させないという目的もあり、漆喰は瓦屋根には欠かせないものです。

漆喰の寿命について

一般的に屋根瓦に使われる瓦の耐用年数は長いもので50年〜60年と非常に長いです。
しかし、漆喰の寿命を見ると、おおよそ20年前後で表面が朽ちてきたり、剥がれてきたりします。
これは、漆喰の原材料が消石灰を主としているため、瓦と比べてしまうとどうしても耐用年数が短くなってしまいます。
漆喰が劣化していく原因は下記のようなものが考えられます。

  • 雨風に当たって朽ちてくる
  • 直射日光や寒暖の差による劣化
  • 時間経過によって漆喰が痩せる

そのため、漆喰は定期的にメンテナンスを行う必要があります。
瓦屋根が割れていたり、剥がれていることには気付いていても、漆喰の劣化にはなかなか気付けないということもあります。
次章では、漆喰の劣化の見つけ方について解説をしていきます。

漆喰のダメージの見つけ方

漆喰は20年前後で、ダメージが出てくるものですが、なかなか気付くことができません。
漆喰は主に屋根のてっぺんに使われているため、下から屋根を見上げても、漆喰部分の劣化になかなか気づくことができません。
いつの間にか剥がれた漆喰部分から雨水が侵入して、瓦の下の葺き土にダメージが伝わり、そのまま棟全体が被害を受けているといったケースも多くあります。
では、漆喰が剥がれてしまうことで起きる症状を段階別に3つ解説していきます。

棟の葺き土の流出

漆喰が剥がれることで、屋根の中で一番大切な棟の葺き土が雨風に打たれ、流出してしまいます。
これは棟の基礎となる部分ですので、致命的な損傷になります。
そのため、漆喰で葺き土をしっかりと保護することで、屋根の耐久年数は大きく変わります。屋根の耐久年数が伸びることで、住宅全体の耐久性にも繋がります。
この葺き土の流出は、なかなか目視では確認することができません。
また、屋根の頂上にあるため、自分で登って確認するのはかなり危険です。
そのため、定期的に細かいメンテナンスをすることをおススメします。
漆喰の寿命は20年前後ですので、20年ピッタリでメンテナンスを行うのではなく、10年ほどで一度メンテナンスを行っていくと、耐久性を維持したまま過ごすことができます。

瓦のズレ、抜け落ち

漆喰が剥がれ、雨水が侵入すると、瓦のズレや抜け落ちに繋がることもあります。
これは棟は瓦を積み上げている場合が多く、その瓦のズレから棟の中に雨水が侵入し、瓦の接着力を弱めてしまうからです。
瓦は現在は建築基準法が変わり、一枚一枚が固定されていますが、法律が改正された2022年1月以前に建てられた住宅は、固定されていません。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
瓦屋根の特徴について詳しく解説!修理費用や方法についても紹介
そのため、一枚ズレてしまうと、それに連なって他の瓦がズレるという悪循環が起こります。
瓦がズレてしまうと、最終的には落下の危険性もあるため、早急な修理が必要になります。

雨漏り

瓦のズレよりも危険な状態が、室内への雨漏りの発生です。
雨漏りが発生しているということは、すでに雨水が屋根に侵入しており、さらに防水シートも劣化しているということです。
この場合は、ほとんどのケースで屋根全体の修理が必要となり、大がかりな工事となることが多いです。
費用も時間もかなり要する工事となるため、ぜひ雨漏りが発生する前に定期的にメンテナンスを行っていきましょう。

漆喰詰め直し工事とは?

漆喰工事

では、漆喰が劣化していることが分かったときには、どのような工事をするのでしょうか?
最も一般的に行われているのが、漆喰詰め直し工事です。
これは、古くなった漆喰を取り除いた後、新しい漆喰を塗り込みます。
漆喰の劣化症状が比較的軽く、棟へのダメージが深刻ではない場合は、この漆喰詰め直しが最も自然です。
既存の漆喰をそのままにして、上から漆喰を塗る「詰め増し」という方法もありますが、施工後の寿命が短いため、あまりおすすめはできません。
これは、ひび割れや剥がれの上に重ねて漆喰を塗っても、新しい漆喰にも直ぐにヒビが浸透してしまうからです。
また、漆喰は10ミリ程度の薄さで隙間に塗り込みますが、既存の漆喰に重ねると厚みが増します。
厚みが増すと、棟からはみ出てしまい、雨風の影響を受けやすくなります。
雨風にさらされることが最も劣化を早めますので、できる限り漆喰の詰め直し工事でメンテナンスをするようにしましょう。

漆喰詰め直し工事の工程

では、漆喰詰め直し工事の工程について説明していきましょう。
ほとんどの場合は、修理専門業者が行ってくれますが、どのような工程で進めているのかは確認しておきましょう。

  • 古い漆喰を取り除く
  • 清掃して下地を整える
  • 新しい漆喰を詰めなおす

工程自体は、非常に簡単なものですが、屋根の特徴や漆喰の特徴に合わせた繊細な工事が必要となります。
また屋根の上ということで、危険も非常に多い作業です。
DIYでもできるかもと思えるかもしれませんが、漆喰工事はプロにお任せした方が確実で綺麗に仕上がります。

漆喰詰め直しにかかる工事日数

漆喰詰め直し工事は、範囲が極端に広くなければ、1日ほどで終わります。
ただし、工事のためには足場の設置が必要になることがあります。
足場の設置と撤去はそれぞれ1日ずつかかるため、トータルでは3日~4日程度掛かると見ておきましょう。

漆喰の補修が必要な場合の修理費用の相場目安

漆喰の補修が必要な場合の修理費用の相場を紹介します。
劣化が軽微な場合は部分的な漆喰の塗り替えとなります。
劣化が激しい場合は、棟部の耐震・耐風改修を含んだ棟部の葺き直しがおススメです。

 工事内容 工事費用の目安
漆喰の部分塗り 5万円~10万円
漆喰の塗り替え 15万円~20万円
棟部の葺き直し 35万円~50万円

漆喰の劣化が雨漏りに直結するわけではない

漆喰の役割は、冒頭でも触れましたが、大きく分けると2つです。

  • 葺き土を風雨から守る
  • 見た目を良くして美観を守る

漆喰だけで雨漏りから守っている訳ではないため、少々漆喰がはがれてもすぐに雨漏りするわけではありません。
そのため、少し漆喰が剥がれていても直ぐに大きな問題になることは少ないでしょう。
しかし、屋根修理の中には不安をあおり、無駄な修理をさせようと詐欺を働いてくる業者も残念ながら存在します。
屋根修理工事は特に詐欺が多い工事として知られており、訪問販売やチラシ、電話など様々な方法で近づいてきます。
しっかりと修理をしてくれるのであればまだ良いですが、中にはずさんな工事をしてより悪化させてしまうケースもあります。
漆喰の修理でも必要以上に重ね塗りして、結果的に剥がれにつながったというケースも耳にします。
漆喰は普段なかなか目につきにくい場所であるため、特に訪問販売で屋根に上らせてほしいとお願いするような業者には特に注意しましょう。
屋根修理の詐欺に関しては、以下の記事も参考にしてください。
屋根修理の詐欺に気を付けよう!詐欺に遭わないためのポイントを解説します

まとめ

今回は、瓦屋根に欠かせない漆喰について詳しく解説をしてきました。
普段目にすることは少なく、名前も聞いたことはあるけど何を指しているのかわからないとなるのが漆喰かなと思います。
しかし、漆喰には重要な役割があり、昔から日本の建物を守ってきたものです。
目につくことが少ないため、メンテナンス時期の悩みもあると思います。
そのため、もし築10年以上の家で、メンテナンスの記憶がない方は、ぜひ一度修理業者に相談してみてください。
屋根や住宅を守るためにも、修理業者が必ず力になってくれます!

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